新潟市秋葉区山谷町。
駅も程近く、大型店舗や飲食店なども点在する利便性に優れた場所であるが、
主要道路から少し入ると、昔ながらの住宅も数多く残っており、ひっそりとした雰囲気のある地域である。
敷地は間口が約5mで、南北に細く長く伸びた敷地であり、
東側には市の所有する土地、いわゆる赤みちと呼ばれる使い道のない遊歩道のような部分がある。
前面である南側にも自動車学校があり、狭い敷地ながらも周辺の環境や自然を取り込むことのできる潜在的な魅力のある土地であった。
間口の狭さを克服し、周辺の環境をどのように取り込んだ室内空間を計画できるかが鍵であった。
1Fを生活主体とする計画も検討したが、自家用車の駐車スペースの確保や、広々としたLDK空間の確保、周辺からの視線などの考慮し、
2Fを生活主体とする案に至った。
住宅の要望としては、コンパクトであっても家族が集るLDKがあり、そして家族がプライベートな時間を確保できること
駐車スペースは来客を含めて3台分を確保、広めの玄関、LDKと寝室や水回りを同一階にすること・・・などなど。
そこで、1Fには、広めの玄関、W.C、個室を2部屋、3畳の外収納を計画した。
奥に長い敷地であるため、必然と長い廊下ができたことで、個室2部屋のプライバシーがしっかりと確保できた。
一番奥には外収納を設け、直接外部から出入りできるようにしたことで、
冬場のスノーダンプやタイヤ、野菜などのストック、ゴミの一時保管ができるなどに配慮している。
2Fは階段を上がってすぐに16畳ほどのLDKを設け、全面のひらけた面に大きな窓を設置した。
これにより階段を通じて1階にも光が落ちるようにしている。
また、東面や南面のひらけた面に窓を配置し、取り付け高さや、窓の大きさを検討しながら、外部環境を室内に取り込んでいる。
これにより、外部への視線の抜けが生まれ、LDKが面積以上の広さを感じさせている。
LDKから続く廊下からはW.C、洗面、脱衣室、浴室などの水回りへとアクセスでき、廊下の一番奥にプライバシーを確保できる寝室を計画している。
一見、狭い住宅には不向きかと感じる奥へと続く廊下が、むしろLDKの広さを広く感じさせる効果を持たせた。
廊下を行き来するたびに、この家の良さを感じさせてくれる装置になるようになればと考えた。
そのほかにも廊下から大容量のロフト収納へと固定階段で昇降出来て、各部屋の雑多なもので広さを妨げないようになればと計画している。
間口も狭く、いわゆる不毛な土地として安価で売られていた敷地に、いろいろな人たちの力を合わせて、家という畝を起こし、
その畝の中に家族という新しい種が植えられ、春夏秋冬と時間の移ろいを繰り返して、家族と共に思い出を刻みながら暮らしていく。
そのことで新たに萌えて芽吹いて、家と共に成長していく家になるようにと想いを込めた設計となった。
『萌畝の家』:専用住宅
所在地 : 新潟市秋葉区山谷町 用途地域 : 第一種住居 防火指定 : 法22条適用地域 構造 : 木造軸組金物工法(耐震等級2) 認定長期優良住宅 Ua値:0.44 [W/㎡K] ηa値:1.6[W/(㎡・K)] 階数 : 地上2階 最高高さ : 7.325M 最高軒高 : 6.411M 前面道路 : 4.0M(南側) 敷地面積 : 112.99㎡ 建築面積 : 56.91㎡ 延床面積 : 100.53㎡(1F:43.62㎡ / 2F:56.91㎡) 竣工 : 2022年4月6日 Photo : 星野 裕也